柔道整復術の歴史
JUDO THERAPY HISTORY
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4900年以上の歴史を誇る東洋医術
東洋医術の始まりは、古代中国の皇帝伏義が医学と八卦を大成させた紀元前2900年頃とされています。それから3000年を経て、日本でも「大宝律令」として701年に医の律令が定められました。その後、一部改定した「養老律令」が制定され、宮内省に典薬寮、内務省に内薬司というものが設置されました。典薬寮には、骨、関節の損傷を取り扱う「按摩」という専門職が設けられていました。
日本柔道整復の礎を築いた男たち
1619年、中国から亡命していた陳元が拳法(柔術)と正骨術を江戸と長崎で伝授しました。
1746年、高志鳳翼が日本最古となる整骨書「骨継治療重宝記」を著します。ただ、この本には治療法の記載が少なかった為、吉原元棟が柔術の救急法に基づいて、「正骨要訣」を発表。
1810年、大阪の各務文献が運動作用の理論研究書「整骨新書」と「各骨真形図」を執筆。今日の整形外科非観血的療法そのものと言われています。
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西洋からの新風。柔道整復術の苦難の時代。
江戸時代にめざましい発展を遂げた整骨術にとって、新政府によって西洋を万能とする医療制度改革が行われた明治時代は、苦難の時代でした。
明治6年(1873年)、太政官令によって整骨師は医者として認可され、翌年の「医制」公布により新たに開業を希望する場合は、明治8年(1875年)制定の「医師学術試験規則」に基づいた局部解剖、生理、病理など計7科目に合格することが求められました。
明治18年(1885年)、内務省の通達により医術開業試験合格者以外は、いかなる医業も新規に開業できなくなりました。このとき、届出にも試験にも合格しなかった従来からの接骨・整骨師は「従来接骨業」として、各府県から一代限りの制約付きで認可されました。しかし、明治24年(1891年)には東京府令によって、従来接骨業者であっても「接骨科」等の看板を掲げることが禁じられました。さらに明治44年(1911年)には内務省令によって按摩術、鍼灸営業取締規則がそれぞれ制定・公認される中、接骨業のみが取り残されてしまいました。
明治45年(1912年)、こうした状況を危惧した楊心流・神之神道流・天神真楊流の三流に属する柔道整骨家によって、整骨術復活のための公認運動が始まりました。
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動乱の時を経て、悲願の単行法が全会一致で可決!
昭和5年(1930年)4月「大日本柔道整復師会」は「全日本柔道整復師会」に改称し、昭和7年(1932年)には日本初となる柔道整復師養成を目的とした学校「大阪接骨学校」を設立します。さらに昭和10年(1935年)に開催された全国大会も奏功し、翌年には内務省によって柔道整復師の健康保険取扱が認可され、昭和21年(1946年)には「按摩術営業取締規則」から分離独立する形で単行法も制定されました。しかし、翌年に発布された新憲法によってそれまでの各省令は失効。さらに、柔道整復術に否定的であったGHQ(連合総司令部)の方針から、柔道整復術は廃止の方向で検討されました。そのような中、一松 定吉厚生大臣と小野 孝厚生委員長が尽力し、GHQの了解を得た「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法」が国会を通過し、法律第217号として制定・公布されました。
昭和28年(1953年)、それまでの3年間、独自に活動をしていた「日本柔道整復師会」と「日本接骨師会」が統合し、11月には「社団法人全日本柔道整復師会」が認可され、業界を代表する団体が誕生し、その組織力は飛躍しました。昭和45年(1970年)、柔道整復師の念願であった単行法「柔道整復師法」が全会一致で可決。昭和63年(1988年)には修学三年制、国家試験、大臣免許の三点に関する改正が行われ、試験実施に関する事務および登録を行う柔道整復研修試験財団が設立されました。
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学術面でも発展を遂げる柔道整復術
昭和63年(1988年)、柔道整復師法が改正され、試験や免許の管轄が都道府県知事から厚生大臣へと移行されます。平成5年(1993年)、第1回柔道整復師国家試験が実施され、国家資格として本格的なスタートを切りました。他方、学術面においても柔道整復術は更なる飛躍を遂げます。
平成3年(1991年)、日本柔道整復師会から学術部門を独立させる形で、柔道整復師に加えて医師、理学療法士、工学・体育・教育分野の教授および教員も参加する「日本柔道整復接骨医学会」が設立されます。平成14年(2002年)に日本学術会議から認証され、自然科学部門第7部会に団体登録されました。同年、3年制の柔整学科短期大学部を京都府の明治鍼灸大学に設置し、平成16年(2004年)には4年制大学である保健医療学部柔道整復学科が同大学(4月より明治国際医療大学と改称)に開設されました。
今後の発展には、科学的な検証が不可欠
現在、スポーツや介護分野などでも活躍する柔道整復術。平成14年(2002年)には日本の伝統医療「ジュウドウセラピー」としてWHO(世界保健機構)に取り上げられるなど、世界的にも注目され始めています。今後、柔道整復術が日本の医療の一端を担っていくには、古来より培われてきた技術手法を近代科学的な視点から検証し、柔道整復術の有効性を立証することが必要です。