第6回 日本柔道整復師会論文集

第6回 日本柔道整復師会論文集 page 15/34

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肘関節捻挫の一考察~結果として内側型野球肘を生じる~平成14年に提出された『柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関する質問主意書』に対して、当時の内閣総理大臣小泉純一郎より出された『答弁書』には、『「亜....

肘関節捻挫の一考察~結果として内側型野球肘を生じる~平成14年に提出された『柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関する質問主意書』に対して、当時の内閣総理大臣小泉純一郎より出された『答弁書』には、『「亜急性」とは、身体の組織の損傷の状態が急性のものに準ずることを示すものであり、「外傷性」とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すものである。』と明記されている(図9)。図7ここで解剖をもう一度見ていくと、内側側副靭帯、特に前斜走線維の走行からも、単に側方へのスライドを制動しているとは思えず、むしろ外方への回旋を制動しているような走行をしているように見えるし、動的な制動組織の一つと考えられている円回内筋の走行も同じように見える(図8)。図9また、捻挫の定義、概念には、微妙なニュアンスの違い、解釈の違いがあるが、最新の神中整形外科学には「関節部に介達外力が作用し、関節の生理的運動範囲を越えてあるいは関節の運動方向とは異なる方向の運動が矯正された場合に関節包、靱帯の一部に損傷を起こしたものを捻挫(sprain)と呼ぶ。」と記載されている(図10)。本来、捻挫の概念は、もっと多岐にわたるものであるが、ここでは割愛させて頂く。図8また他の前腕屈筋群も全て斜めに走行していることも意味があるかもしれない。そして腕尺関節は、基本、蝶番関節であり、回旋運動は本来生理的な運動機能としては有しておらず、この関節の回旋運動は非生理的な運動であるかと思われる。■療養費について我々柔道整復師が療養費を取り扱う中で、ルールブックに該当する「柔道整復師の施術に係る算定基準の実施上の留意事項」には、「1通則(5)療養費の支給対象となる負傷は、急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないこと。なお、急性又は亜急性の介達外力による筋、腱の断裂(いわゆる肉ばなれをいい、挫傷を伴う場合もある。)については、P15 5の(3)の5より算定して差し支えないこと。」と明記されている。また亜急性、及び外傷性の定義については、種々の専門書に記載されているのでここでは割愛するが、興味ある資料をここで紹介させて頂く。12図10■まとめ以上から、いわゆる野球肘と言われるものは、1急性、又は亜急性に発症し、2「野球で投球した」という外力により肘関節に生理的運動範囲を越える過度の外反(捻れ(回旋)・外力)が強制され、内側側副靭帯を中心とした軟部組織の損傷がベースにあり、3結果として肘関節内側部の疼痛、及び機能障害を発症したもの、というプロセスと結果から見ていっても、“外傷性の捻挫”として捉えることに何ら問題ないと考えられる。