ブックタイトル第9回 大阪学術大会論文集 2015
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第9回 大阪学術大会論文集 2015
マレットフィンガーⅠ型(腱断裂)の固定法の考察~伸縮テープのみによる動的安定を追究した固定~図14■考察Ⅰ腱断裂断端中枢部を末梢方向に移動させるには、断端膨隆部に中節骨に対して直下に圧を加えることにより、膨隆した腱が鉛直方向に伸張されると推察し実施した。■考察Ⅱ私の臨床経験からマレットフィンガーに関してはⅠ・Ⅱ・Ⅲ型の区別はなく、同様のテーピング法で治癒に至るケースがほとんどである。マレットフィンガーを施術するにあたりⅠ・Ⅱ・Ⅲ型の病態把握が絶対に重要であることは否めない。病態把握がしっかりとできれば、各々の型に対してどの部位に大きな綿花圧を加えるかを考察するだけで、治癒に至ることを数多く体験した。また損傷部に新たな外傷応力が加わったケースではRSDを発生させ、治癒に至るまで苦慮した経験も追記しておく。よって動的安定性を求めるにあたり静的固定を否定するのではなく、最小限度のアルフェンスシーネを装着しRSDの予防策を取ることは重要なことで、動的安定性の範疇と考える。断端腱を伸張するにあたり表層の皮膚膜を延長させるのではなく、深部筋腱を延長させるためには断端部膨隆部より直下圧を加えた上で、末梢側に移動させることが重要である。また前述の状態でテーピングすることや綿花による直下圧で、指の屈曲動作において伸筋腱の断端部が鉛直方向に伸張可能なことが、本症例で演繹解析できた。図15またDIP関節部での屈曲変形の予防を目的として、伸縮性テープを末梢部掌側から開始し、背側へ移行させた。さらに断端膨隆部に直下圧を加えた状態で背側にテープを貼付することで、指の屈曲動作により膨隆部にテープによる直下圧が加わるように配慮した。次に屈曲時に発生する内・外側動揺に対し、抑止力を高める目的で、内・外側から螺旋状にテーピングを行った。さらに膨隆部断端が末梢方向に伸張される応力を増強する目的で、断端部の直上に綿花による圧迫を行った。最後に、膨隆部が中枢側に移動し難い状態を作ることと、鉛直方向への伸張を補助的に促すために、綿花の中枢側に伸縮性テープを環行した。また最後に綿花の末梢側へ環行したテープは、綿花を被覆する目的のみで大きな意味を持たない。■結果本症例は約10日間の放置を経て施術を開始したが、動的安定を求めた能動的なテーピングと綿花圧による固定法のみで治癒できた。したがってマレットフィンガーのⅠ・Ⅱ・Ⅲ型に捉われず、動的安定を求めた固定法は有効であると考えられた。また今回の体験から患者の同意が得られるのであれば、新鮮例および陳旧例にかかわらず挑戦することが、私たち柔道整復師の使命ではないかと考える。しかし、受傷後の何日間あるいは何週間までが治癒に至るケースであるかは定かではなく、これからの私自身の課題であると考えている。■結語この独自の固定法を考案したことで、私たち柔道整復師は教科書や整形外科書に記載されていることが、最優先選択事項と考えがちではないかと感じた。本来は整形外科学の理論を熟知した上で、我々柔道整復師自身が色々な側面から検討・考察し、演繹解析した結果を発表することや、検証したことを集積することが、柔道整復学の構築に繋がるのではないかと痛感した。13