ブックタイトル第9回 大阪学術大会論文集 2015

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概要

第9回 大阪学術大会論文集 2015

両前腕骨遠位端骨折の治験例樋口正宏東淀川支部/ヒグチ整骨院/日整公認私的研究会近畿接骨研究会相談役■キーワード保存療法、解剖学的整復位、両骨同時に整復■はじめに近年、骨折治療は手術療法が主流になってきているように思われる。それには様々な側面があると推察するが、手術適応とされる症例中に保存療法の方がベターな症例は存在しないのであろうか。中等度から高度な骨片転位のある橈骨遠位端骨折、両前腕骨遠位端骨折も多くが手術療法となっているようであるが、その中で機能的予後が良好でない症例も少なくないように感じる。関節機能に影響を与える可能性が高い橈骨手根関節面の大きな転位や陥没のない症例の多くは、転位が高度であっても徒手整復で解剖学的整復位もしくはそれに近い状態の整復位を得ることができると考えている。それを追究することが柔道整復師の大きな使命の一つであり、このような考えに一人でも多くの柔道整復師が賛同してくれることを願う。Numerical Rating Scale(NRS)10<初検時外観>(図1)正面から橈骨軸・尺骨軸を合わせた状態で見ると橈側・尺側への転位は確認できないが、橈側・尺側へ軽度のストレスや重力が加わるとその方向への転位が認められた。側面からは明らかなフォーク背状変形が確認できた。初検時外観■目的両前腕骨遠位端骨折は橈骨遠位端単独骨折と処置は概ね同じであるが、両前腕骨遠位端骨折の方が遠位骨片の異常可動性が大きい。ことに橈側・尺側への異常可動性は高度で、遠位骨片が橈尺側方向へグラグラするといった場合が多い。当骨折の治療は、この点に注意しながら進める必要があると考える。■方法<症例>85歳男性<受傷機転>玄関マットで足を滑らせ転倒した際、左手を床に衝き負傷。<初検までの経過>受傷3時間後に来院。<傷病名>左両前腕骨遠位端骨折<初検時局所所見>左前腕遠位端部から手背部にかけて腫脹(+)、左橈骨遠位端部限局痛(+)、左尺骨遠位端部限局痛(+)、フォーク背状変形(+)、異常可動性(+)、軋轢感(+)。図1<初検時エコー所見>橈骨背側Longより背側転位、橈骨掌側Longより背側転位、橈骨橈側Longより橈側転位を認めた。尺骨背側Longより背側転位、尺骨掌側Longより背側転位、尺骨尺側Longより尺側転位を認めた。橈骨橈側転位、尺骨尺側転位を同時に認めるというのは、橈骨・尺骨両遠位骨片部での下橈尺関節脱臼や橈骨遠位骨片部の縦骨折による橈尺方向への離開などを想像したが、実際には橈骨・尺骨両遠位骨片の橈側・尺側方向への高度な異常可動性により、プローブを橈骨橈側に沿って当てるため尺屈した際に橈骨橈側転位が、また尺骨尺側に沿って当てるため橈屈した際に尺骨尺側転位が起こったものであった。17